高知市内から車で30分も走れば、そこはもう、静かな入江と絶壁の海の横浪半島である.
半島と言うが、海に突き出てはいない.
海岸と平行になった谷間が沈降し、10kmほどの細長い入江になっている.
沈み残った海岸の山地が「半島」で、絶壁になっている.
2015年7月 初版
2018年3月15日 修正版
1. 断崖
(横浪の断崖)
太平洋側は断崖であり、簡単に下に降りることはできない.
ところどころにある集落は、昔は船でしか行き来ができなかった.
尾根に「スカイライン」がつくられ、車の通行が可能になった.
道沿いには別荘があり、知人のNさんはそこで養蜂をやっている.
2. リゾート基地
かつて入江に「グリーンピア」と称する国のリゾート基地がつくられた.
高知に来た20年前、行って驚いた.
まず車で入るのに、料金所があってお金を取られる.
しかし、ロクに設備がないし、遊ぶ人もいない.
ホテルにも人影がない.
それにも拘わらず、横でホテルの新館が建築中である.
一体この施設はどうなっているのかと思ったが、やがて運営を中止した.
年金基金を相当浪費したわけだが、失敗が追及された話は聞かない.
(グリーンピア跡.建物が残っている)
2. 国民宿舎
国民宿舎も失敗の多い施設である.
高知でも廃墟になったところが多い.
景色の良いところに、公営でコンクリートの建物をつくり、安く泊まれるようにする、というのがそのコンセプトである.
しかし、安い=安っぽい、そこが問題である.
安っぽい部屋、安っぽい料理、しかし民宿よりは高いし、おもてなしも期待できない.
横浪でも市営国民宿舎が破綻した.
ある人が買い取って、傍にSホテルを建てた.
穴蔵風の部屋で、海を見下ろすアウトバスもある.
やや高いが盛業中である.
泊まった後で、ギリシャ・サントリーニ島のパンフレットを見ると、「あれ?横浪と同じじゃん!」と思ってしまう.
(横浪のホテル)
3. 伊勢海老
(伊勢海老生き造り)
断崖の下に池ノ浦漁港がある.
伊勢海老料理である.
生き造りに鍋、そして雑炊.岩礁があればこそだ.
会食なのか、軽自動車のおばさん達が店に次々入って行った.
(池ノ浦)
4. 学校
半島には明徳義塾中高校がある.
隔絶した土地にあり、一般的な通学は不可能である.
野球の名門校だし、相撲も強い.
「朝青龍明徳」は本校の留学生であって、近くの札所「青龍寺」から名を取っている.
ただ、「地域の代表」、「郷土の力士」と言われても、何かしっくりしない.
松山英樹出身のゴルフ部は、近くのゴルフ場に練習に来るので、生徒の顔を見るのだが.
(明徳義塾のキャンパス.練習の掛声が聞こえる)
5. 巡航船
湾は奥深いので、対岸の学校に通学しようとしても、陸路は湾を東か西に大回りしないと行けない.
そこで9箇所の船着場を巡って、通学用に市営の巡航船が一日3回運航されている.
(埋立船着場)
(横浪船着場)
一般客も乗ることができるが、地図、ストリートビューで巡航船の乗場を探しても、発見はほぼ不可能である.
標識がないことはないが、「知っていれば必要ない.知らなければ訊けばよい」のである.
時刻表も市のホームページ、待合室、船内で少しづつ違っていたりする.
学校行事に合わせているのだろう.
船長さんは、乗るなら埋立-横浪が良いという.
往復2時間の船旅である.
しかし、行った先で帰りの便まで、1時間以上待つことになる.
近くの公民館にはエアコンがあるし、知らせるからそこで待てばよいと言われた.
出向いたら、図書室に「巡航船待合室」の札がかかっていた.
夏休みで乗船客は少なく、帰りに生徒が一人だけ乗ってきた.
あちこちの船着場に客がいないと見ると、着船することなくUターンする.
船長さんも彼女も、どこで、とも言わなかったが、ある岸に着いて、慣れた様子で降りて行った.
(船を下りて)
船長さんは「どこにでもある海」という.
これが大看板や幟で呼び込む観光船ならそうかもしれないが、乗れるだけでも嬉しいのでそうは思わない.
また、入り組んだ湾は、よくある湖の観光船よりずっと楽しめる.
(入江の別荘)
以前不動産業者が、高知でただ一個所、自分の家の庭から釣ができるところがある、と言っていた.
それはこの湾かもしれない.
岸には別荘が点在し、オーバーに言えば、オーストリアの湖を思わせる.
6. ゴルフ場
半島にはゴルフ場がある.
今は県内某ラーメンチエーンが経営している.
起伏が激しく、入江の多いところに作っているので、「ロストボールを1ダース持って行くこと」などと言われる.
下がって上がって狭くなって曲がって、というコースを、ボールを無くしながら楽しむ.
セルフだし、昼食の中華も母体が母体だけに安い.
海越えのホールがある.
と言っても、ペブルビーチのように怒涛逆巻くのではなく、入江である.
(ゴルフ場)
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(おわり)