高知学106 高知城から5kmのところに何がある?

昔、洋酒会社の企画で「冒険」のテーマを募集していたことがありました.

思いついたのは、世界3都市、東京、パリ、ニュ-ヨークを、中心から5kmの円を描くように歩いて1周する、ということです.

もちろん丸い道路はありませんから、その曲線にできるだけ沿うように、ジグザグに曲がったり戻ったりしながら歩くのです.

観光ルートにはない、それぞれの町の特色が味わえるでしょう.

ニューヨークなど、中心をどこに取るかによって、銃で武装した警官の付き添いが必要になる「冒険」です.

高知でこれをやって、東京と比較すればどうなるでしょうか.

 

2019年1月15日 最終版

 

 

1.高知城天守閣から

 

東京での半径5kmだが、皇居を中心とすれば、山手線が大体それに沿う.

しかし江戸城は海に近いところにつくられているので、湾側では豊洲、浅草を通る.

高知の半径5kmはどうだろうか.

 

(高知城から南.下が県庁と市役所)

 

高知城天守閣から周囲を見渡す.

どちらの方向も市街の先は山である.

高知市は西の鏡川、北の国分川、これらの流域の山から流れ出た堆積物の上にできた町である.

桂浜はここから8kmで、東京の中心から見た大井や新木場の位置になる.

 

(高知城から北)

 

北側に見える尾根は5km圏であり、山上を車で回って見よう.

この山は、まだ土讃線もなかった大正時代の高知高等学校(現高知大学)の寮歌に

「見やれば北に 翠巒の山背は高く 軟弱の都の塵をさへぎりて…」

と歌われているのだ.

ただしこの尾根は、市域を囲む円弧ではなく東西に延びている.

上がる道は限られるので、東に8kmの南国市白木谷からになる.

 

2.白木谷

 

(石灰岩の山)

 

高知にはあちこちに石灰鉱山がある.

白木谷にも大きい鉱山があり、採掘場が遠くからでも見える.

堀り出した鉱石は専用道を走るトラック、そしてコンベヤで市域の外部に運ばれる.

その後また積替えて港まで輸送する.

絶えまなく市内を走る石灰石のトレーラートラックは市民に馴染みであり、高知市は鉱山町でもある.

 

(石灰石のトラック専用道)

 

3.久礼野

 

専用道は通れないので、尾根の狭い山道を行く.

 

(久礼野の集落)

 

南国市から高知市に入ると、突然に道幅が広くなる.

この辺り久礼野なのだが、地図ではクララとも記されている.

奇妙な名なので、通りかかった老婦人に尋ねた.

「昔、山近くを年寄りがそう呼んじょった」ということだ.

異国の女性が住んでいたわけではないらしい.

 

(久礼野の住宅地)

 

これで目標の5km圏の尾根に上がったことになるが、この辺り一帯は傾斜の緩い台地になっている.

高知で一番古いゴルフ場がある.

1980から1990年代、経済成長を受けて、高知でも各地にニュータウンがつくられた.

小規模な宅地造成も随所で行われている.

その中で交通に便利なところは「郊外住宅地」であり、不便なところは「別荘地」とされる.

久礼野もその一つで、木立の中に住宅が点在し、辺りにゴルフ場、乗馬クラブなどあるところは別荘地的である.

デンマーク、トービアン氏による、自家製燻製をメインにした予約制レストランも古い.

市内から車で20分余りの「通勤圏」なのだが、300mの峠まで上がるので、そうとも言い難い.

 

(陶美庵)

 

ゴルフ場の周りを散歩してきた、30年お住いのご夫婦と立ち話をした.

一人暮らしになった老男性が、タクシーで町に行って食事を摂り、買物をして帰る暮らしで、タクシー代が月15万になったという.

ただここでも、1km歩いた小学校近くにはバスが来ている.

車を運転できない高齢者にとっては「ラストワンマイル」が問題なのだ.

解決するのは、セニアカーか、電動アシスト自転車か、それとも全く別のシステムなのか.

 

(小学校)

 

近くの久重(きゅうじゅう)小学校は、生徒数50人だが、きれいな木造校舎である.

レストランのT氏も一日先生で来るらしい.

 

(相愛本社)

 

建設コンサルタントの相愛の本社はここである.

自然エネルギー利用のため1階は半地下であり、水は総循環システムになっているそうだ.

 

4.正蓮寺

 

市内から上がってきた道と小坂峠で合流する.

ここが正蓮寺(しょうれんじ)、ゴルフ場の通称もそうだ.

(正蓮寺)

 

ゴルフ場のカートは「自動運転」である.

傍の自宅まで乗って帰ることができれば便利だが.

 

(墓地から)

 

ゴルフ場の下に広い霊園がつくられている.

高知では、もともと海岸の砂地や高台に墓地があった.

水が得難く耕作に適さないためである.

ここは浦戸湾から桂浜近くまで見える景勝地なのだが.

 

(海の見える別荘)

 

尾根の狭い道をさらに進むと、傾斜地にまばらに家が建つ「別荘地」がある.

ここは下からも見え、高知の六甲山だ.

 

(山上の別荘地)

 

下からよく見えるくらいだから、遮るもののない「眺望絶佳」である.

それぞれの家は必ず屋外デッキをつくっている.

見下ろせば一面の町の灯、見上げれば満天の星、海は月光にきらめく.

しかし残念ながら人影がない.

毎週末、曲がりくねった狭い山道を何キロも往来して生活するのは少しつらい.

自動運転技術が完成し、家で車のボタンを押せばここまで連れてきてくれるようになればよいのだが.

 

(ニュータウン)

 

山道を下りたところが、みづきニュータウンである.

葉を落とした街路のこの写真だけ見せ、どこかと訊いて正答する人はいないだろう.

山があるから、小田急か東武の沿線か.

関西なら近鉄学園前か.

ここは3km圏であり、東京なら六本木である.

 

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(おわり)

 

 

 

 

2019年1月11日 | カテゴリー : 高知学 | 投稿者 : 河田 耕一