43 高知の秘境駅・新改のスイッチバック、大杉ではトンカツ

高知から土讃線の普通列車に乗って岡山方面へ、約40分で新改に着く.

山の中のスイッチバック駅である.

「秘境駅」とは、乗降客が無く、辺りに人家もない駅をいう.

県庁所在地から1時間もしないうちに、もう高知の秘境駅がある.

そのような地域は全国他にない.

仕事を終えて、秘境駅で、持参のビールで一杯.

鉄道ファンとして最高ではないだろうか.

 

2017年7月28日 修正版

 

 

1.高知駅

 

koutiekiyoru

(夕方の高知駅)

 

高知の鉄道に、ラッシュアワーは存在しない.

大人の行き来は主に車であるから、道路には混雑時間がある.

建設工事が終了して、作業員が帰る5時前後である.

といっても都会の「渋滞」はないのだが.

通学では、部活、塾が一段落する、夕方7時辺りがピークになっている.

 

⒉.坂を登る

 

yamadaasa

(朝の土佐山田)

 

高知から30分、特急なら10分で土佐山田に着く.

ここから線路は山に入る.

朝、山間部から通う生徒を乗せて、1両がやってきた.

土佐山田から急勾配を繁藤まで300m登る.

今は20分余りだが、昔は前後に蒸気機関車をつけて、50分ほどかかった.

右に左に、急曲線で23本のトンネルを通る.

窓を閉めていても煙は入る.

窒息しそうになるし、顔は煤で黒くなる.

その中間が新改である.

 

3.新改

 

singaisuittibakku

(スイッチバック)

 

急勾配の途中に駅をつくると、停止、発進が困難になる.

そのため、ホームのある線路を分かれて水平につくり、停車する列車は前後で一旦折り返して発着する.

スイッチバックと呼ばれ、全国勾配区間に多かったが、今では勾配に強い電車が多くなって、珍しい存在になった.

新改は昔のままで、下ってきた列車は一旦平らな側線に入り、折り返して右の平坦な線路に入る.

上る場合は逆である.

 

singaitokkyuu

(通過する「南風」)

 

止まらない場合は、そのまま本線を通過する.

 

singaitaihi

(停車する普通列車.向こうを特急が通過する)

 

singaieki

(新改駅前)

 

駅には、下の川筋から標高差約100m、人家のない狭い山道を登って到達する.

以前はスイッチバックの線路に挟まれた箇所に、老婦人が一人住んでいたが、今は木々に埋もれている.

付近には何もない.

公衆電話があったのだが、今はない.

ただし携帯は入る.

知り合いの子どもが、土佐山田からうっかり乗越して、泣きながら電話してきたという.

 

DSCN2732

(夜の新改)

 

特急列車との行き違いのために、長時間停車することがある.

夜間、深い森の中で、乗客はホームをうろうろする.

 

4.新改を過ぎて

 

新改辺りを列車で通ると、上にぽつりぽつりと人家が見える.

国道は鉄道と離れたルートを通っているので、ここには行き難い.

消えそうな細い道はあるので、辿ってみた.

 

singairessyasyuuraku

(特急が通る)

(下を土讃線のトンネルが通っている)

 

往来が不自由なので、廃屋も目立つが、畑は耕され住人はいる.

ここまで、高知市内で賑わっているイオンモールから車で1時間もかからない.

人口減少社会の見本のように思われるが、そうでもない.

高知では、都市も、田舎も、海も、山も、過疎地も、みな近いのである.

仕事を終え、ビールを持ってJRに乗れば、6時半には新改に着く.

スイッチバックを通過する特急を眺めて一涼み.

 

5.繁藤から大杉

 

sigetoueki

(繁藤)

 

上りきると繁藤、やがて大杉である.

県民投票で選ばれた「推薦の店」の食堂がある.

カツ丼並が800円、トンカツが2枚載るボリュームである.

 

hibarisyokudou

(役場前の食堂)

 

昼時は、国道を行き来するドライバーで行列ができる.

大抵の町では、繁華街で横丁を曲がるとトンカツ屋があるものだが、高知にはない.

高知県民はトンカツが嫌いなのではない.

トンカツ味噌ラーメンは定番である.

しかし、マダムのお喋りランチは、500円を超すと高いという声が出る.

トンカツでは難しい.

厚い肉を揚げる本格トンカツは時間がかかる.

男性に、昼間にトンカツを食べるなど、時間のかかる商談の機会は少ない.

といって、夜は食事イコール飲酒だから、冷えたトンカツは大声で騒ぐ場に不向きである.

ここは、自分で融通ができる焼肉である.

ただしカツ丼は、揚げてある、下ごしらえしてある、などとファストフードである.

 

6.吉野川に沿って

 

穴内、太田口と小さな駅が続く.

突然雷鳴のような轟と共に、低空飛行で戦闘機が2機現れ、あっという間に頭上を通過した.

吉野川から早明浦ダムに至る川筋は、米軍訓練コースになっている.

先年、英国の湖水地方、ウィンダミア湖畔を散策した.

すると、同じように数機の戦闘機が現れ、低空飛行を繰り返した.

屈曲した山の湖は訓練の場になるらしい.

 

ootagutirahuteinngu

(ラフティング)

 

この辺りの吉野川はラフティングの場である.

貸切バス7台で来た中学生が、次々にゴムボートに乗る.

何艘かグループで出るが、早くもパドルで水をかけ合うなど、盛り上がっている.

やがて激流へ、歓声だか悲鳴だか、ここまで聞こえてくる.

 

iwaharakawa

(土佐岩原)

 

土佐岩原駅が高知最北端である.

ラフティングもここが終点である.

騒ぎ疲れたのか、中学生は一列で岸を黙々と上がってくる.

近くにいた先生に訊くと、大阪からの修学旅行で、昨夜は民宿に分散して泊まったそうだ.

それにしても、バス7台もの子どもの集団は、絶えて見たことがなかった.

居るところには居るものである.

 

 

関連記事リンク:

外国人の案内.本山と棚田

特急グリーン車乗り放題で四国東部を回る

高知学トップページに戻る

 

(おわり)

2016年5月16日 | カテゴリー : 高知学 | 投稿者 : 河田 耕一

42 高知・ 楮佐古林道のダート道.大栃から国道439へ.

林道は、文字通り林業のためにある.

森林率が84%の高知では、至る所に林道がある.

高知の物部川から標高1,380mを越え、国道439号線、京柱峠の麓に至る、楮佐古(かじさこ)林道を通った.

未舗装のダート道で、かなり荒れたところもあるが、軽4駆なら問題ない.

オフロードバイクにもよく利用されている.

無精ではあるが、林道を行くことは、車によるハイキングや登山と言ってよいのかもしれない.

 

2017年4月8日 修正版

 

 

1.林道

 

bassai

(楮佐古林道)

 

林道には種類がある.

1)大規模林道

2)ふるさと林道

これらは2車線で、我々が持つ「林道」のイメージではない.

高知の観光エリアである天狗高原に登るには、普通大規模林道が利用され、狭い国道や県道を通らない.

ふるさと林道は、林業目的よりも、山奥の集落の交通改善が目的である.

一般の道路の資金の出どころは国交省であるが、「林道」や各地にある「広域農道」は農水省の予算、という差である.

3)一般の林道

以上に対して、木材の伐採や搬出が主目的であるのが、通念としての「林道」である.

ただし、「ふるさと」のように、集落の交通路となっていることもある.

4)作業道

作業道は、一時的な伐採などの目的で設けられる.

巾も狭いし、整備もされていない.

作業が終われば、そのまま廃道になることもある.

 

keitorayane

(西谷林道)

 

しかし、延長十数キロに及ぶこともあり、その差は明確ではない.

多くは、入口に鍵のかかったゲートや、コーン、注意書が設けられ、迷い込む危険は少ない.

無視して入って事故を起こしても、「道路」ではない場所での発生として、保険が適用されないおそれがある.

 

⒉.楮佐古林道

 

高知の物部川流域から峠を越えて、吉野川流域、祖谷方面に向かう林道が3本ある.

西の谷相林道は、崩壊でほとんど見捨てられている.

東の祖谷山林道も崩壊しているが、京柱林道で通り抜けができるようだ.

中にある楮佐古林道は、未舗装のダート道が20kmほど続くので、オフロードバイクに人気がある.

通った日もレースがあって、次々と泥まみれのバイクがやってきた.

 

rindoubaiku

(楮佐古林道)

 

3.林道へのスタート

 

楮佐古林道には、国道195号の大栃から入る.

途中の集落で止め、1/25,000の地図を眺めた.

軽トラの男性が寄ってきて、どこに行くかと訊ねる.

林道を抜けて京柱まで、と答えると、

「うーん、祖谷か、バイクは通るが車はどうかな」

ちらと時計を見て、

「まだ早いので、引き返す時間はあるから、気をつけて」と言ってくれた.

 

kajisakonoyamae

(行く手の山)

 

辺りは新緑でまぶしい.

しかし目指す山は、まだ茶色である.

 

4.山の道

 

sinryokunomiti

(森の中)

 

やがてダートになる.

 

hekomi

(くぼみを下がり、上がり)

 

路面の凹凸が激しい.

くぼみには泥水が溜まっている.

バイクが泥まみれになるはずである.

四駆でないと、泥でスリップして這い上がれないかもしれない.

山菜取りの軽トラをみたが、タイヤ径が小さいので、注意しないとつかえる.

 

 

rindougake

(路肩の崩壊)

 

崩れている箇所があるが、補修され、この程度なら支障はない.

 

kuzure

(峠近く)

 

辺りが開け、峠は近い.

斜面が崩れているが、道幅が広いので、大丈夫である.

 

5.峠

 

林道頂上

(頂上)

 

峠付近は笹原で、点々と樅が生えている.

1,443mの奥神賀山には、標高差60m、距離500m、文字通り「指呼の間」である.

持参のサンドイッチなど食べたが、さすがに風は冷たい.

 

okujingatouge

(峠から見た大栃方面)

 

南の方向、大栃方面まで見通しが良い.

 

tougewokoete

(荒れた道が続く)

 

峠付近は笹原だから、あまり林道の必要はない.

それだからか、荒れた路面が続く.

 

kuzure024

 

10年前に通った時も、同じように荒れていたから、荒れているなりに補修がされているのだろう.

走行には支障ないが、石でタイヤの側面を裂く危険がある.

スペアタイヤはあるが、1本である.

ただ、高知県東部ではナイフのような石があるが、ここはそれほどではない.

地質の差によると思われる.

マッサージ椅子に座るように、左右に揺すられる.

 

6.439(よさく)へ

 

rindouwonukete

(棚田に出る)

 

肩に力の入る運転であったが、棚田が見えてきた.

平野部では青田が育っているが、ここではようやく水を張ったところである.

 

yosakunideru

(西峰の439国道)

 

国道に合流する.

掃除をしていたおばさんと立話をする.

物部から山を越えてきた、と言うと仰天された.

「バイクは通るが、車で通ったという人は聞いたことがない.

開通したときは皆で見に行ったものだが.

いつぞや、どうにもならなくなって、歩いて夜中に戻ってきた人がいた」

通った人が皆報告するわけではないが.

 

7.林道の通行

 

林道通行の心得である.

1)冬は不可

高知でも標高1,000m近くなると雪が積る.

吹き溜まりでは1m以上になるから、通れない.

2)続いた雨、特に豪雨、台風の後は不可

路肩、斜面は必ずどこかで崩れるか、緩んでいる.

3)強風時は不可

立木で辛うじて止まっていた岩石が落ちてくる.

4)日曜、休日がよい

作業がないので止められることがない.

木材を積んだ大型トラック、道路工事の大型ダンプが来ない

5)携帯は圏外で、カーナビは出ない.

交通量がゼロに近いところが多いから、事故を起こしても、発見される確率はゼロに近い.

 

関連記事リンク:四万十、仁淀に次ぐ第三の物部川

        大月の断崖と漁村の入江

高知学トップページに戻る

 

(おわり)

 

2016年5月2日 | カテゴリー : 高知学 | 投稿者 : 河田 耕一