22 高知市から近い断崖と入江の横浪半島.伊勢海老と巡航船

高知市から車で30分も走れば、そこはもう絶壁の海と、静かな入江の横浪半島である.

土佐湾を横切って、大地に見えない軸があると学者は説明する.

地震のときに、この軸を中心に大地がシーソー運動をする.

軸より南の室戸岬は隆起し、北の陸地は沈み込む.

高知西部の海岸は、沈み勝手の土地なので、リアス式海岸の複雑な地形である.

横浪半島と言うが、海に突き出てはいない.

海岸と平行の谷間が沈み、10kmほどの細長い湾になっている.

海岸側の細長い山地を、半島と称している.

 

2017年3月31日 修正版

 

 

1. 断崖

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(半島の断崖)

 

太平洋側は断崖であり、簡単に下に降りることはできない.

ところどころにある集落は、昔は船でしか行き来ができなかった.

尾根に「スカイライン」がつくられ、車の通行が可能になった.

道沿いには別荘があり、知人のNさんはそこで養蜂をやっている

 

2.   リゾート基地

 

かつて湾に面して「グリーンピア」と称する国のリゾート基地がつくられた.

高知に来た20年前、行って驚いた.

まず車で入るのに、料金所があってお金を取られる.

しかし、ロクに設備がないし、遊ぶ人もいない.

ホテルにも人影がない.

それにも拘わらず、横でホテルの新館が建築中である.

一体この施設はどうなっているのか、と思ったが、やがて運営を中止した.

年金基金を相当浪費したわけだが、失敗が追及された話は聞かない.

 

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(グリーンピア跡.建物が残っている)

 

2.   国民宿舎

 

国民宿舎も失敗の多い施設である.

高知でも廃墟になったところが多い.

景色の良いところに、公営で鉄筋の建物をつくり、安く泊まれるようにする、というのがそのコンセプトである.

しかし、安い=安っぽい、そこが問題である.

安っぽい部屋、安っぽい料理、しかし民宿よりは高いし、おもてなしも期待できない.

横浪でも市営国民宿舎が破綻した.

ある人が買い取って、傍にSホテルを建てた.

穴蔵風の部屋で、海を見下ろすアウトバスもある.

やや高いが盛業中である.

泊まった後で、ギリシャ・サントリーニ島のパンフレットを見ると、「あれ?横浪と同じじゃん!」と思ってしまう.

 

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(横浪のSホテル)

 

3.   伊勢海老

 

断崖の下に、高知では知られた池ノ浦漁港がある.

伊勢海老である.

生き造りに鍋、そして雑炊.岩礁があればこそだ.

会食なのか、軽自動車のおばさん達が店に次々入って行った.

 

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(池ノ浦漁港)

 

4.  学校

 

半島には明徳義塾中高校がある.

隔絶した土地にあり、一般的な通学は不可能である.

野球の名門校だし、相撲も強い.

「朝青龍明徳」は本校の留学生であって、近くの札所「青龍寺」から名を取っている.

ただ、「地域の代表」、「郷土の力士」と言われても、何かしっくりしない.

松山英樹出身のゴルフ部は、近くのゴルフ場に練習に来るので、生徒の顔を見るのだが.

 

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(明徳義塾のキャンパス.練習の掛声が聞こえてくる)

 

5.   巡航船

 

湾は奥深いので、対岸の学校に通学しようとしても、湾を東か西に大回りしないと行けない.

そこで12箇所の船着場を巡って、通学用の市営巡航船が一日4回運航されている.

 

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(巡航船、埋立船着場)

 

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(横浪船着場)

 

一般客も乗ることができるが、地図、ストリートビューで船着場を探しても、発見はほぼ不可能である.

標識がないことはないが、「知っていれば必要ない.知らなければ訊けばよい」のである.

時刻表も市のホームページ、待合室、船内で少しづつ違っていたりする.

学校行事に合わせているのだろう.

船長さんは、乗るなら埋立-横浪が良いという.

往復2時間の船旅である.

しかし、行った先で帰りの便まで、1.5から2時間待つことになる.

近くの公民館にはエアコンがあるし、知らせるからそこで待てばよいと言われた.

出向いたら、図書室に「巡航船待合室」の札がかかっていた.

夏休みで乗船客は少なく、帰りに生徒が一人だけ乗ってきた.

あちこちの船着場に客がいないと見ると、着船することなくUターンする.

船長さんも彼女も、どこで、とも言わなかったが、ある岸に着いて、慣れた様子で降りて行った.

 

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(船を下りて)

 

船長さんは「どこにでもある海」という.

これが大看板や幟で呼び込む観光船ならそうかもしれないが、乗れるだけでも嬉しいのでそうは思わない.

また、入り組んだ湾は、よくある湖の観光船よりずっと楽しめる.

 

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(入江の別荘)

 

以前不動産業者が、高知でただ一個所、自分の家の庭から釣ができるところがある、と言っていた.

それはこの湾かもしれない.

岸には別荘が点在し、オーバーに言えば、オーストリアの湖を思わせる.

 

6.   ゴルフ場

 

半島にはゴルフ場がある.

今は県内某ラーメンチエーンが経営している.

起伏が激しく、入江の多いところに作っているので、「ロストボールを1ダース持って行くこと」などと言われる.

下がって上がって狭くなって曲がって、というコースを、ボールを無くしながら楽しむ.

セルフだし、昼食の中華も母体が母体だけに安い.

海越えのホールがある.

と言っても、ペブルビーチのように怒涛逆巻くのではなく、入江である.

 

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(半島のゴルフ場)

 

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関連記事リンク:断崖と入江の大月

                            高知の別荘地と別荘学

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(おわり)

 

2015年7月16日 | カテゴリー : 高知学 | 投稿者 : 河田 耕一

21 高知でもっとも奥深い伊尾木川.46km先には誰が住む?

高知の東部は特殊な地形である.

標高1,000から1,400mの山々を何本もの川が削り、海に向かって直線的に、独立して平行に流れている.

高い山が海に近く、かつ雨量が非常に多いため、流れ落ちる急流がこのような地形をつくった.

黒部峡谷は断崖と激流で有名だが、例えて言えば、黒部峡谷が何本も平行しているイメージである.

しかもそこには人々が住んでいる.

谷筋に沿っての行き来はできる.

しかし、高い山を横断して隣の谷に行くことは難しい.

その一つ、安芸市の伊尾木川を訊ねてみよう.

 

2017年3月24日 修正版

 

 

 1.     伊尾木川

伊尾木川は、もっとも奥深くから流れていて、またもっとも山奥まで人が住んでいる.

河口の安芸市から最奥の集落まで46kmある.

デマンドバスで2時間かかる.

 

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(入河内付近)

 

川の下流、上流、どこにでも鮎釣りの人を見かける.

 

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(森林鉄道の鉄橋、入河内)

 

昔は伊尾木川に沿って森林鉄道で木材を搬出していた.

今も鉄橋やトンネル跡などが多数残っている.

トロッコに便乗ができたが、終点から安芸までは7時間ほどかかった.

買物は3日がかりで、1日目に行って旅館で泊まり、2日目に買物、3日目に帰ったという.

もっとも安芸市での買物は年1回くらいで、普段は昔あっただろう、地区のよろず屋で間に合ったのではないか.

途中に発電用の小さなダムがある.

ダム湖はほとんど岩石で埋まっていて、上高地の大正池のような景観になっている.

伊尾木川のどこでも、絶え間なく山崩れが発生しているので、当然である.

 

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(ダムの上流)

 

川幅は次第に狭くなり、岩の間を澄んだ水が激しく流れている.

 

2.  古井

 

中ほどが古井である.

92歳のおばあさんと73歳の息子さんに出会った.

おばあさんは色白で、腰も曲がらず、かくしゃくとしている.

息子さんはこれから川に鮎がけに行くという.

ダムの奥でも放流されているので可能である.

途中の道に「場所取りはしないように」と漁協の看板があったが、鮎と同じく釣師にも縄張りがあるらしい.

 

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(古井にて)

 

廃校になった大きな小中学校がある.

1980年に建てられた鉄筋の校舎で、教員宿舎とともに、遠くから来る生徒の寄宿舎も付随している.

2001年に廃校になっているので、わずか20年で情勢が変化したことになる、

生徒5人の俳句が板に刻まれている.

最後の卒業生なのだろう.

「天の川 夜空の恋路 二人きり」などと、ませた句もある.

郵便局があるが、閉鎖されている.

ポスト、自販機、電話と文明の利器が並んでいるが、電話は無音である.

伊尾木川沿いで携帯は圏外だが.

ポストは収集が行われている.

自販機は動いている.

狐や狸が葉っぱを持って買いに来るのかと思うが、砂防工事がいくつも行われているので、需要があるのだろう.

 

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(古井簡易郵便局)

 

わずかな平地に水田がある.

吊り橋があって、まさしく「日本の原風景」だが、横に立派な鉄橋があって、今は使われていない.

 

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(島の橋)

 

3.  終点

 

最後の集落が別役土居である.

以前から顔を合わせるおじいさんがいて、椎茸を育てているが猿が むしって困る、などと話していた.

今回はおばあさんがいた.

おじいさんはしばらく前に亡くなったという.

町に息子がいるが、そこに行っても、部屋でじっとしているだけで何もすることがない.

ここがいいそうだ.

久しぶりの晴天でふとんを干し、草を刈り、花を整理している.

鶏の世話もする.

デマンドバスは週2回来てもらえるが、毎日あっても毎日乗らないしね、ということだった.

 

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(別役土居)

 

安芸市の町からここまで46kmということは、中央線なら新宿から立川を過ぎて高尾よりまだ先である.

高尾から新宿の救急車を呼んでも、往復4時間しないと病院に行けない.

最近新しい道をつくるときの常套句は「いのちの道」だが、「いのちの平地」があって、救急ヘリが着陸できれば心配は少ない.

 

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4.駒瀬越

 

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(駒瀬越から 下が別役土居)

 

標高650mの別役土居を過ぎれば、1,050mの駒瀬越への登りにかかる.

周囲は1,400m以上の山で、冬は積雪で通れない.

高知・徳島の県境になる峠の頂上にトンネルがある.

徳島側には人家がないが、下れば阿南への国道に出る.

途中カモシカの子に出会ったことがある.

徳島側では絶えず道路工事をやっていて、2回に1回しか抜けられたことがない.

今も「改良工事」で、9か月間通行止めになっている.

長期に交通を止めての「改良」は、何か違う気もするのだが.

 

関連記事リンク:

消えた集落と子ども

椿山、最後の焼畑の地

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(おわり)

 

2015年7月6日 | カテゴリー : 高知学 | 投稿者 : 河田 耕一