73 高知の山奥で食べる、地鶏、蕎麦、フレンチ

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山奥でゆっくり食事をしたり泊まったり、高知での候補を挙げてみよう.

・特別な食事が楽しめる

・泊まることができる

・辺りの風景が素晴らしい

・簡単には行けない

以上が条件である.

すぐに行けて、お金さえ用意できるなら、銀座や軽井沢に、いくらでも店やホテルがある.

行くことに困難が伴うから、行った先での楽しみが増加する.

しかし行った先が、「まあこんなもの」では「がっかり名所」になる.

行き難いほど、行った先に対する満足度要求レベルは高くなる.

 

2017年9月5日 修正版

 

 

1.畑山温泉

 

畑山温泉には、高知市から室戸岬に向かう途中の安芸市から、山道を40分.

一日3回のコミュニティバスを利用することもできる.

地鶏・土佐ジローの料理を提供する、3室の宿である.

 

(畑山温泉への道)

 

安芸川に沿って上流へ.

都会から来る人は、たいてい道路の狭さに驚く.

しかし、これは高知では普通である.

通行が極めて少ないから、これでよい.

 

(畑山温泉)

 

料理は胸肉のたたきを始めに、ご主人が焼いて見本を示してくれる各部位の炭火焼、鳥鍋と進んで、しめは親子丼.

 

(第2皿の炭火焼、5人前)

 

翌朝は卵かけご飯だから、土佐ジローを食べ尽くす.

飼育場は下流に、処理場は川向こうにある.

 

(安芸川)

 

畑山集落を貫く安芸川にダムは無く、いつも澄んだ水が勢いよく流れている.

7月の朝だったが、アカショウビンの声が聞こえた.

南国から渡ってきた渓流の鳥である.

 

 

(水力発電所跡)

 

上流に行くと、今は使われていない小さな水力発電所がある.

以前の勤め先で、電気系の部長が、「僕の夢は山の発電所の所長だったのだがなあ」などと言っていたのを思い出す.

 

(廃校の畑山小中学校)

 

畑山温泉の鶏料理、もちろん素材は良い.

一般の鶏は45日で出荷するが、これは150日という.

ただ、養鶏が専門のご主人、元新聞記者の奥さん、いずれももとからの料理人ではない.

しかし、この調理、盛り付け、味付けは、各地の一流の鶏料理を研究し尽くした結果ではないだろうか.

「田舎だから」、「地元食材だから」で済まさない、最高を求める姿勢を感じる.

 

2.寒風山の蕎麦

 

高知市の東、伊野から愛媛県の西条まで、国道194号線が伸びる.

県境になる標高1,763mの寒風山を、長さ5.4kmの長いトンネルで抜ける.

瓶ヶ森、石鎚山と1,900mクラスの連山である.

麓は紅葉でも、上は霧氷や雪.

10月だったが、11月になると山の上は通行止になる.

なお、標高1,500mにある山荘は、改装で2019年まで休業中である.

 

(山への道)

 

麓の山峡に蕎麦「時屋」がある.

国道に小さな看板があり、そこから折れて谷筋を遡る.

 

(国道の分かれ)

 

峡谷を行く道には人家は無く、本当にここに蕎麦屋があるのか、不安になる.

2kmほどで、林の空きスペースに止まる車が見え、谷間に蕎麦屋が現れる.

紅葉であった.

 

(蕎麦・時屋)

 

小道を下って、小体な建物に入る.

座敷と渓流に向かった縁側がある.

度々来ているらしい男性は、迷わず縁側に腰を下ろした.

 

(渓流に向かって)

 

なぜ主人はこの場所を選んだのだろう.

水は石鎚からの流れだから、もちろん良い.

しかし一番の理由は、理想の蕎麦空間をつくりたかったのではないだろうか.

都会の有名蕎麦店といっても、電線が這いまわっていたり、裏口に空き箱が積みあがっていたりする.

ここには醜いものは一切ない.

蕎麦はもちろん旨いが、空気も、渓谷も、しつらえも、出してくれるお茶も、すべて極上の蕎麦空間である.

勘定でちらと見える厨房も、白木が美しく、清潔で整理が行き届いている.

途中の長い山道は蕎麦への前奏曲なのかもしれない.

車のナンバーを見ると、高知、愛媛だけでなく、全国から来ている.

納得する.

 

3.滑床渓谷

 

山の蕎麦屋は、高知県いの町にある.

しかし、トンネルを抜けるとすぐに愛媛県西条で、伊野よりはるかに近い.

愛媛の奥座敷である.

滑床は反対で、愛媛県松野町にある.

愛媛県の観光地としては辺境で、松山から遠い.

しかし高知側からは、四万十川や天狗高原の観光とリンクするルートである.

観光は自治体の視察旅行ではないから、行政区域によらず、滑床は高知の観光地と言っても良い.

大体、流れの上は高知・愛媛県境だし、川は四万十川に流れ込む.

 

 

(夕暮れの渓谷)

 

滑床は磨かれた花崗岩の、文字通りの滑らかな岩である.

雪輪の滝は、防具を着けて滑り降りるキャニオニングの場である.

さらに奥に行けば、昔あった森林鉄道線路跡や橋台がある.

 

(雪輪の滝)

 

雪も舞いそうな12月の夕暮れで、谷川を歩いて出会ったのはハイカー一人であった.

「ケーン」という鋭い一声が響く.

シカに5頭出会った.

 

(森の国ホテル)

 

渓谷にはシャレ-風の「森の国ホテル」がある.

上高地帝国ホテルを模しているが、フェイクではなく、立派な建物である.

持ち主は松野町だが、今の指定管理者は、全国にDIホテルチエーンを展開する企業である.

紅葉や新緑の頃は混雑するが、この季節、泊り客は我々二人だけであった.

しかし二人でも手抜きはない.

暖炉には赤々と薪が燃えている.

料理は変わらず楽しめる.

ワインはよく料理にマッチしている.

先日テレビでクルーズ船を紹介していたが、その料理は「これでクルーズ?」と言いたい、ありきたりの「洋食」であった.

滑床は違う.

 

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(おわり)

2017年7月18日 | カテゴリー : 高知学 | 投稿者 : 河田 耕一