高知学97 2018年7月豪雨のあと2、安芸川

2018年7月の西日本豪雨は、高知にとっても経験したことがない豪雨であった.

西から東への雨雲が連続してぶつかった四国西部の宿毛がひどかったが、高知東部にも大きい被害をもたらした.

高知県東部には安芸川、伊尾木川、安田川、奈半利川の大きい河川がある.

このうち安芸川、伊尾木川は被害がひどく、川沿いの道は通行止めとなった.

ひと月を過ぎ、8月20日、安芸川を訪ねた.

安芸川は通れるが、奈半利川は1/3の大井までであり、その先は依然通行止である.

 

2018年8月26日 最終版

 

1.安芸川

 

(安芸市から上流を見る)

 

高知県東部の4河川は、剣山の南に広がる1,200から1,400mの山々を源流にしている.

その内で安芸川がもっとも西に位置し、河口は安芸市である.

ダムはないが、7,8年に1回くらい増水があり、河川敷のゴルフ練習場や高校の野球場が水没した.

今回も同様だが桁が違う.

 

 

(半壊の堤防と堆積した土砂)

 

川筋が曲がる辺り、堤防が半壊している.

もし完全に決壊していれば、安芸市全域が水没したとされる.

屈曲部の河床は、流れてきた土砂が積もってすっかり高くなり、一部除去されて水路ができているが、ダンプが絶え間なく往来している.

一体ダンプ何杯分になるだろう.

 

(川沿いの集落)

 

土砂と流木が河床を岸まで埋め、ユズ畑は半分砂で埋もれ、流れてきた枝葉が引っかかっている.

住宅には今少しのところであった.

通行規制のガードマンの男性によれば、車は「ちゃがまった」(高知の言葉で「駄目になった」の意)そうだ.

 

(安芸ノ川分岐)

 

流木や枝葉があちこちにひっかかかっている.

折柄、市会議員選挙でポスターが掲示されているが、市域が広いので大変なことだ.

分かれ道の先は安芸ノ川の集落だが、この先の道は壊滅状態という.

以前真新しい黒色の軽ワゴンが曲がって行ったので、今も住んでいる人がいるのだな、と思ったがどうなっただろう.

 

(沢の岩石)

 

谷川や沢にはコンクリートの護岸などないから、増水が激しいと、水面に近い樹木は根こそぎ持ってゆかれる.

大きい石が幹の間に挟まっている.

激しい流れで跳ね上がったのだろうか.

 

(路肩の崩壊)

 

流れに近い道はあちこちで下がえぐられ、通行時間規制で復旧工事が行われている.

この先の畑山集落は一時孤立し、29人が自衛隊ヘリで市域に移送されたということだ.

ただ、流れの影響を受けない高みにある道路には被害がない.

 

2.畑山

 

(畑山へ)

 

畑山集落に入る道は変わりないように思えるのだが.

 

 

(左は元の郵便局、2017年)

 

今は閉鎖されているが、小さな郵便局があって、向いの護岸に座ってその絵を描いたことがある.

 

(郵便局前の道路)

 

道路も腰を下ろした岸も、すっかり姿を消している.

橋は何とか残っている.

畑山には以前は日帰り温泉があった(今は日帰り入浴はない).

20年前に来たとき、350円と安かったのだがシャンプーが見当たらず、これかなと思って使おうとしたら、おじさんから「それはワシの」と言われた.

その後地鶏、土佐ジローの飼育が成功し、あらゆる料理で土佐ジローを食べ尽くす「オーベルジュ」となり、泊まって大いに満足している.

幸い飼育施設、温泉とも少し高いところにあったので今回被害はなく、営業が再開されている.

 

(畑山の流れ、2017年)

 

流れは澄みつつあるので、いずれ元の姿に戻るだろう.

しかしここでこれだけの被害をもたらす増水があったということは、この奥からそれだけの水が流れてきたことになる.

 

3.中津尾林道

 

畑山はどんづまりのような印象だが、実際には中津尾林道で800mの峰を越え、香美市大栃に出られる.

上がって行くと中津尾、堂平(どうだいら)の集落がある.

 

(堂平、2017年)

 

2017年には、中津尾で家にいる人を見たし、堂平では犬が繋がれていたので、それぞれ一所帯の住民は間違いない.

豪雨ではどうしただろうか.

 

(源流の山と伐採地、2017年)

 

この辺りの深い山々が源流域であり、西からここにぶつかった雲が大増水をもたらした.

森に包まれた山々はがっしりと見え、緑がその底まで続いているかのような安心感がある.

しかし伐採跡を見ればわかるが、木々は饅頭に生えたカビのようなものであり、森林はごく表面の薄皮に過ぎない.

薄皮が無ければ、地中海沿岸のような不毛の岩山が続くのである.

今回大きい山崩れは無かったようなので、よくあれだけの雨水を吸収したものだと感心する.

吸収しきれなかった分が、下に流れて水害をもたらしたのだ.

しかし、今少しスポンジの吸収力があれば、被害はそれだけ小さくなる.

薄皮の吸水力を増すことが重要である.

 

(峠の看板)

 

峠には「熊に注意」の看板がある.

源流の山々は、四国で最後に残るツキノワグマの生息地である.

センサ付きカメラでは十数頭の生存が確認されている.

人里が遠く、標高が高いため人工林が少なめで、餌を供給する広葉樹林が残っている.

少人数で贅沢を言わなければ?何とか暮らしてゆけるのだろう.

子熊もいるらしい.

しかしすくすくと成長している姿はまだ確認されていないという.

昼なお暗い森が間伐で日が当たるようになり、下草を食い荒らすシカが減り、広葉樹が育ってゆけば、熊も過ごしやすくなる.

森の吸水力を増加させる要因でもある.

 

(おわり)

 

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2018年8月21日 | カテゴリー : 高知学 | 投稿者 : 河田 耕一