77 高知の山で産業を見る.壮大な発電所と鉱山

山の産業というと林業だが.

しかし、エネルギーを生み出す発電所は、山の中に多い.

また、生活に欠かせない資源をつくる鉱山は、山の中である.

高知のこれら産業の現場は、ダイナミックである.

風力発電所、鳥形山鉱山、揚水発電所を訪ねる.

 

2017年9月29日 最終版

 

 

1.風力発電

 

(葉山風力発電所)

 

須崎から梼原に至る国道197号線で津野町を通ると、山に風車が並んでいるのが見える.

標高1,000mにあるので、60kmほど離れた自宅からも晴れた日には見え、双眼鏡では回っているのがわかる.

 

(山の上)

 

風力発電機は、1台1,000kW(1MW)のものが20基あるので、合計2万kWである.

小さいダムの水力発電に等しいが、風のないときは動かないし、強風の時は破壊されないように停止する.

一般に風力発電機の稼働率は40%以下とされるので、それなら8,oookW以下である.

1基なら400kWで、四万十川沿いに大正時代につくられた、小さな松葉川水力発電所に近い.

それに比べれば、取水や水路が要らないから簡単である.

 

(風力発電)

 

今日は風が良く、ヒュンヒュンと音を立てて回っている.

実はこの発電所は四国電力のものではなく、電力自由化に伴って大阪ガスが建設したものである.

 

(風車の基部)

 

1基が点検作業中であった.

高さは60mで、エレベータがあるという.

いま上昇中だそうで、開いた扉から電子音が聞こえてくる.

タワーの先端は揺れるだろうし、足元を見るのは、想像しただけでも怖い.

 

2.鳥形山

 

(鳥形山鉱山)

 

高知と愛媛の県境である、四国カルストに近いところに鳥形山がある.

ここは年間1,345万トンを産出する日本最大の石灰鉱山である.

石灰は高炉での鉄の生産に欠かせない.

新日鉄が採掘し、千葉の君津製鉄所に運ばれる.

 

(鳥形山)

 

鳥形山は順次上から削られ、標高1,200mのところで採掘が行われている.

自宅から平らになった山頂と、なだれた岩石がよく見える.

上ることができるが、裏からになり、採掘の現場は見えない.

 

(ゲート)

 

一帯は発破があり、危険で立入りができない.

 

(風力発電所から見た鳥形山)

 

しかし、葉山風力発電所からは、全体がよく見える.

12時、発破開始のサイレンが鳴る.

やがてドンという音と共に、白煙が上がった.

というのはウソで、5km離れているので、白煙が上がって15秒で音が届く.

 

(なだれ落ちる岩石)

 

端の方が崩され、岩石がなだれ落ちる.

180トンダンプが動いているはずだが、ほとんどわからない.

 

(須崎湾)

 

風力発電所から、須崎湾が見える.

石灰岩は須崎まで、この山々をトンネルで貫いた、24時間運転のコンベヤで運ばれる.

 

 

(積替所)

 

コンベヤは9区間に分かれていて、谷間に出たところに積替所がある.

 

3.揚水発電

 

高知から愛媛県西条に至る国道194号線、寒風山トンネルの近くに、本川揚水発電所がある.

一定出力で運転する原子力発電所を始め、使用量が減る夜間には電力が余る.

電池に充電して貯蔵する.

その電池が揚水発電所である.

水力発電所の上下に貯水池を設ける.

昼間は上から下に水を流して発電し、下に貯める.

夜になって電力が余ると、発電機をモータに切換え、逆回転させてポンプとし、下に貯まった水を上に揚げる.

本川発電所の出力は61.5万kWである.

魚梁瀬ダムの水力発電所は14.5万kWだから、格段に大きい.

普通のダムは、雨水を貯めてチビチビ使うのだが、ここでは昼間に上池をカラにしても、夜にまた満杯にできる.

本川発電所の流量は毎秒140立方メートルである.

ただ、ポンプの効率や流水の運動ロスがあるから、発電出力は、揚げるに要する電力の70%程度である.

エネルギーを使う電池だが、他にこれだけの大電力を蓄える方法はない.

 

(本川地下発電所)

 

発電所は地下300mにある.

 

(大橋ダム湖)

 

下池は大橋ダム湖で、水面下に取水・放水口がある.

壁面に水面が上下した跡が残っている.

入口から発電所まで約1km、作業トンネルが通じている.

 

(作業道)

 

地下室の長さは100m、深さは50mで、5階になっている.

地下1階は点検分解時の作業室で、2台の発電機兼モータの上端が見える.

 

(発電機の上端.手前は水車)

 

見学者のために、出力アップで不要になった水車が置いてある.

水車は25トンのステンレス鋳鋼製で、螺旋状に穴が鋳込まれ、プロペラになっている.

点検時には作業者が穴に潜り込む.

そういうと、見学の小学生は、必ず「入りたい!」というそうだ.

 

(水車の軸)

 

地下2階は発電機、地下3階では発電機と水車を結ぶ軸が見える.

その下に、案内羽根の移動機構と水車がある.

伊方原子力発電所3号機の出力は89万kW、坂出火力発電所は4基で138万kWであり、これらのバッファとなる.

一方、四国最大の西条太陽光発電所は、3.3万kW(33MW、風力発電機の33台分)である.

発電所の規模としては小さいし、夜間は発電しない.

しかし、太陽光発電所は大小各地にあるので、対応が必要となっている.

真夏の昼間、各発電所はフルに運転される.

秋口、エアコンは切られ、工場は5時に終業した.

しかし日はまだ高く、太陽光発電は続く.

そのため、吸収するよう、夕方に揚水を始めることがあるそうだ.

 

(稲村ダム)

 

車で40分山道を上がると、ロックフィルダムの上池、稲村ダムに達する.

発電所への落差は560mである.

これは黒四ダムに等しい.

ここまで水を押し上げるのだ.

 

 

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四万十川を源流から上流

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(おわり)

 

2017年9月23日 | カテゴリー : 高知学 | 投稿者 : 河田 耕一

76 四万十川を源流から下る-のどかな上流を窪川まで

四万十川のイメージは、沈下橋のある、ゆったりと流れる幅広い川である.

源流から始まり、南に向かう窪川までの上流、方向を変え西に向かう中流、そして南に河口に至る下流に分けられる.

イメージとして持たれているのは下流なのだが、上流、中流にもそれぞれの良さがある.

上流を探ってみよう.

 

2017年9月14日 最終版

 

 

1.源流

 

四万十川は四国最長の川で、源流点から河口まで250kmある.

しかし直線で結ぶと、たった60kmである.

それだけ寄り道をし、屈曲して流れているのである.

 

(源流の山)

 

源流点は、標高1,336mの不入(いらず)山にある.

昔、名の通り、藩が伐採を禁じていた.

国有林で、西側は森林鉄道が敷かれて伐り出された.

しかし、今も30%が自然林で、明治期の樹齢120年の造林地もあるという.

 

(源流点近く)

 

源流点には林道を上って行く.

品川ナンバーの車に出会ったが、行き違いは不得手のようで、こちらが後戻りした.

車道に碑があり、そこから25分登山道を歩けば、源流点に達する.

 

2.谷を出る

 

(山を出た四万十川.津野町中村)

 

四万十川の特徴は、甚だしく蛇行していることである.

流域の傾斜が緩やかで、かつ水量が非常に多いためである.

蛇行によって山は次々に削られ、土砂がその間に滞積する.

それが川沿いに豊かな水田をつくる.

渓谷を出たところだが、もう蛇行が始まっている.

 

(津野町の菓子工場)

 

津野町が名物にしている、菓子「満天の星」の工場がある.

町の急傾斜地でつくられるお茶も名産である.

カフェが併設されているし、高知市内にもアンテナショップがあり、町のなかなかの努力である.

 

3.沈下橋

 

(高樋沈下橋)

 

源流から10kmほどのところに、最初の沈下橋がある.

お母さんが子ども3人を遊ばせる、のどかな光景である.

ただ、これは地元の人だからできることである.

ここ2週間ほど雨が無く、さすがの四万十川の水量も減った.

普通なら砂利の河原がほとんど隠れていて、流れも速い.

第一、沈下橋があるのは、それを越える出水があるということである.

左の水田の際まで、浸かるのではないか.

10kmでもうこれだけの水量があるのだから、一帯の降雨は激しい.

それが豊かな森林と「最後の清流」をつくっている.

 

(久万秋、飲料水工場)

 

「四万十の水」の工場がある.

付近には自然の湧水があり、四万十の知名度を利用しただけのネーミングではない.

 

(長野沈下橋)

 

沈下橋の多くは、今も生活道として使われている.

アユやウナギを捕る姿が見られる.

 

(一斗俵沈下橋)

 

一斗俵(いっとひょう)は1935、昭和10年につくられた現存最古の沈下橋で、登録有形文化財である.

沈下橋はのどかに見えるが、付近での水遊びは極めて危険である.

川の中に橋脚の異物が立っているので、水中に渦が巻き、複雑な流れと深い淵ができる.

表面からはわからないので、よく水難事故が起きる.

ここでは、橋のたもとに大小二つの救命浮輪が置かれている.

 

4.小さな発電所

 

(水路橋)

 

道路に沿って、鉄製の構造物が続いている.

これは発電用の水路である.

 

(発電用水路)

 

四万十川に小さな堰があり、そこから引いている.

農業用水に近いが、現役で、電力会社の係員が点検を行っていた.

 

(松葉川発電所)

 

末端には、1925、大正14年につくられた発電所がある.

ここまでの落差は30m弱、長い水路で稼いできた.

最大出力は320kWで、多くのダム式発電所は2-4万kWだから、その1/100の、可愛らしい発電所である.

 

5.川に沿って

 

四万十川に沿って下るには、川の左岸(東岸)の道が普通であって広い.

これで十分にのんびりしているが、右岸(西岸)はさらにのんびりしている.

 

(右岸の道)

 

道は狭いが、通るのは地元の軽か、デイサービスの老人の送迎車くらいである.

行き違いに戸惑っていれば、向こうが気をきかせて譲ってくれる.

 

(暮れる四万十川)

 

川岸の草がなぎ倒されて茶色になっている.

先日の大雨のとき、ここまで水が来たのだろう.

 

 

(窪川、西川角)

 

小さな集落をときどき抜ける.

道に沿う用水路は、清冽な流れである.

民宿もある.

寂しければ、窪川の夜の街に繰り出すこともできる.

やがて、コンビニやホームセンターが現れ、窪川の町に入る.

四万十川はここで直角に流れを変え、向こうの山裾を流れてゆく.

 

(四万十川にかかる橋.手前が窪川の街)

 

高知に来て四万十川に行きたいという人は多い.

しかし、中村など下流に行くなら、一泊しないとハードスケジュールになる.

「上流」は近いし、沈下橋もあって、「ミニ四万十川」として十分に味わえる.

 

(おわり)

 

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2017年9月10日 | カテゴリー : 高知学 | 投稿者 : 河田 耕一