高知学67 香南市のチベットを探る.時効になった未解決事件とは

「XX町のチベット」、時々聞く表現である.

天空にあって隔絶されたチベットのように、その土地の中心から遠く離れた、奥深いところを指す.

差別的ではなく、浮世を離れた桃源郷の意味もある.

地方の市町村では、コミュニティバスが運行されている.

多くは「チベット行」である.

住んでいる香南市のチベットを探る.

山里には未解決の怪事件もあったのだ.

 

2018年7月8日 改訂版

 

 

1.コミュニティバス

 

(夜須駅)

 

香南市の夜須駅には、第三セクターのごめん・なはり線、とさでん交通の路線バス、香南市コミュニティバスが集まる.

路線バスは国交省の所管である.

一方、コミュニティバスは、自治体が過疎地で乗合有償輸送をするもので、総務省と言ってよい.

車は自治体が所有し、運転は地元タクシー、観光バス業者、シルバー団体に委託している.

 

(羽尾行.出発から12分)

 

コミュニティバスのダイヤは大きく二つの目的から構成されている.

1)小学生、保育園児の通学

朝に学校に送り、夕方帰らせる.

児童の通学状況に合わせ、経路、行先などフレキシブルに運行されている.

2)高齢者の通院、買い物

地域で異なるが、毎日でなく週1、2日のことも多い.

基本的にどこでも乗れ、どこでも降りられるフリー乗降である.

住民が非常に少ない地域では、事前に予約を行うデマンド運行になる.

 

(羽尾の峠へ)

 

山越えで1時間かかる羽尾には、通学の小学生が居たとき毎日運行であった.

すれ違った夕方の最終便には女の子が一人、最後部の座席で本を読んでいた.

 

2.距離感

 

都会で、下車する駅から自宅までのバスの所要時間に対する距離感はどうか.

5分:近い

10分:まずまず

15分:少し遠い

30分:かなり遠い

田舎での行き来は基本的に自家用車であるが、この距離感は同様のように思う.

 

(奈良行バスで正延.ここまで40分)

 

20分を過ぎると、ぽつりぽつり廃屋が見える.

のどかな山村風景が続くのだが.

 

(奈良.廃校の小学校が見える)

 

1時間かかる奈良は、デマンド運行の終点である.

この先は無人の山道が延々と続く.

車で1時間弱、ハンドルを回し続けて舞川に着く.

 

3.チベットを訪ねる

 

(舞川)

 

舞川は四方面から来る道路の結節点である.

しかし、どこからでも2時間近くかかるのは厳しい.

大きい藤の木があり、花の時節にはイベントが開かれていた.

いま、何軒かの家や公民館に人影はない.

若者が一時期居たようで、簡易な宿泊施設や、川に張り出したライブ演奏デッキがつくられている.

以前は谷川で子どもが泳いだり、いいところではある.

しかし、絶対ここでなければ、ということでもない.

来ることに時間と労力がかかるほど、来訪者の期待値レベルは高くなる.

応えられるかどうかだが.

 

(羽尾.今日はライブで宴会)

 

羽尾の住人は22人である.

廃校跡に山荘がある.

校舎の利用ではなく、ログハウスのしっかりした個室である.

庭でテントを張ったり、炊事もできる.

市の所有だが管理者家族が住み、安心できる.

近くに住むYさんは、予約で山菜料理を出してくれる.

地域おこしでは、一時的なイベントではなく、絶えず人が来る仕組みが必要のようだ.

 

4.未解決事件

 

のどかな香南市であるが、いまなお未解決の怪事件が発生した.

平成16年1月1日未明に起きた、5神社連続放火である.

住民が大晦日に、社殿の初詣準備を整え、境内の清掃を終え、眠っているときである.

 

(有宮神社)

 

午前4時20分、有宮神社に火の手が上がった.

駅から25分の香南市バスの終点で、この先は峠になる最奥の集落にある.

第一現場であることは、再建の経緯を述べた石碑に記されている.

以下は自分の推理である.

消防隊が町から駆け付ける.

しかし、急な石段を上る高台の頂であり、ホースの延伸、川からの汲上げなど作業に手間取る.

 

(山北浅上王子宮)

 

そこに、山北の神社に火がつけられる.

町に近い由緒ある神社で、棒踊りで知られている.

今さっき、消防隊が出てきたばかりの方角である.

犯人は出会わないよう、迂回して背後をついた.

 

(十二所神社)

 

以上の二神社は、合併前の旧香我美町にある.

香我美町は騒動だが、旧夜須町は山を隔てている.

離れた隣村に出来事があっても、警戒はない.

ところが、犯人は山を越えてやってきた.

夜須町の500mしか離れていない二つの社殿に、次々放火する.

奥の十二所神社は、阿弥陀堂と人家が近くにあり、大胆な犯行である.

 

(尾根から見た夜須町.香我美町は山の向こう)

 

次に尾根に向かって山道を上る.

もう人家はないし、夜の林道を通る車もない.

尾根の小さな社が燃やされる.

白み始めた6時過ぎ、最後の篝火は麓からよく見えたであろう.

状況に通じた地元の人間の仕業であることは間違いない.

地域には他にも多くの神社があるのだから、衝動的に火を付けて回ったわけではない.

その後、不審者の報道がないまま10年を過ぎ、時効となった.

最大の被害者は氏子の老人である.

社殿再建のため、年金から5万、10万を拠出しなければならなかった.

損害の請求権は20年あるから、2024年までは取り返せる可能性がある.

犯人はもう死んでいる、という噂もあるのだが.

 

関連記事リンク:消えた集落と学校

        越知黒森山、山上の集落

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(おわり)

 

2017年4月20日 | カテゴリー : 高知学 | 投稿者 : 河田 耕一