63  高知の森を魚梁瀬、野根山に探る.「世界遺産級」の驚愕の植林

高知は海のイメージが強いが、その84%が森林である.

全国平均は56%である.

さらにその山の67%がスギ、ヒノキの人工林である.

全国平均は40%である.

いずれも日本一と言ってよい.

昔は総延長740kmもの森林鉄道が敷かれていた.

高知の東部、魚梁瀬より奥へ、10kmあまり遡ると千本山に到達する.

今は保護林で、樹齢270から370年の杉の林である.

ここを始めに、高知の山を訪ねてみよう.

そこには驚きの植林で埋め尽くされた山がある.

 

 

2017年2月22日 最終版

 

1.千本山

 

(渓谷の道)

山の道は、冬とあって、登山客は見られず、渓谷で野鳥の写真を撮る一人だけに会った.

登山口では、高さ50m以上の大杉が2本出迎える.

登山道には木道と階段がつくられ、歩き易い.

 

(登山口)

 

植林する場合、苗は何でもよいというものではない.

真っ直ぐ育つとか、枝の出し方がよいなど、優秀なDNAを持つ木の種子が選ばれる.

そのために選定された樹木がマークされている.

スイカもそうで、近所の「スイカ屋」ハウスで訊くと、とにかく優秀な苗を入手することが重要だそうだ.

我家は生ごみを庭に埋めているが、昨年スイカが芽を出した.

スイカ屋さんの見よう見まねで、柱を立て、空中で吊るして育つようにした.

小型スイカが一つ実った.

美味しかったのは、スイカ屋さんで入手したものの種であったせいだろう.

 

(春、千本山から魚梁瀬を望む)

 

魚梁瀬杉は、土佐藩の有力な財源として、厳重に管理され、育成されていた.

高知の宝の山に目をつけ、混乱の時期に皆伐の計画が立てられた.

第一は山内容堂で、近代化施設の開成館の財源を目論んだ.

第二は板垣退助の立志社で、活動資金として払い下げを受けた.

どちらも失敗に終わり、現在の姿が残っている.

 

2.須川林道

 

谷沿いの道は見通しが効かない.

山を見るには、尾根に上がらなくてはならない.

奈半利から野根に至る、昔の野根山街道に沿う須川林道を上った.

 

(須川林道から魚梁瀬方面.すべての木は手で植えられた)

 

魚梁瀬方面までよく見えるが、見渡す限りの山腹は、すべてスギかヒノキの人工林である.

1950から1970年代にかけて植えられた.

機械などない時代、全部人手で整地をして、苗木を担ぎ上げ、一本づつ植えた努力が、山をくまなく埋め尽くしている.

谷底から山頂まで、想像を絶する労働の集積である.

万里の長城は1本の線である.

これは、視界すべての面である.

強制された労働ではない.

日々、無名の人たちが、営々と勤労に勤しんだ結果である.

長城以上の人類の成果ではないか.

日本が誇る「世界遺産」である.

 

 

(伊尾木川流域.一本一本の植林の結果である)

 

以前、植林のイベントに参加した.

 

(植林の体験)

 

登るだけでも苦労する斜面を、苗木を担いで上がる.

土地は、すでに地元の方々によって灌木、雑草が取り除かれ、整地されている.

小さな穴を掘って植える真似事だが、10本、20本がせいぜいである.

その後は、下草刈りも行わなくてはならない.

 

(羽根川流域、これから苗木を植える)

 

高知県民というと、酒を呑んでおだを上げるイメージを持たれる.

しかし、やればこれである.

もっとも、一旦始めるとブレーキがかからず、徹底的にやるということかもしれないが.

 

 

(カモシカ)

 

カモシカに出会った.

シカは立ち止まってもすぐ逃げるが、カモシカは好奇心が強いのか、フリーズするのか、動かない.

こちらが動くと目だけ追っている.

何かしてやりたくなるが、カナダの公園の掲示にあったように、

“Fed animal is dead animal”

である.

冬の暖かい日が続いていたが、900mまで上ると、日陰の路面には雪が残り、アイスバーンになっている.

最高地点は1,000mで、北斜面になる.

引き返すことにした.

 

3.日本の植林地

 

スギ、ヒノキの人工林は、日本全国至る所に見られる.

大規模に集積する地域はどこか.

それには森林鉄道を見ればよい.

森林鉄道が大規模ということは、大量の伐採が可能な大森林ということである.

伐採をすれば、必ず植林を行う.

植林を含んだ年間の森林の生育量が、年間の伐採量を上回れば、生産は永遠に持続される.

森林鉄道の規模と伐採、植林は比例する.

 

(青森、津軽森林鉄道線路跡)

 

大規模の森林鉄道集積地である.

1)津軽半島:最初に森林鉄道が設けられ、総延長でもっとも長い

2)秋田の二ツ井:秋田スギの中心で、奥深い

3)木曽の王滝:本格的な鉄道に近い

4)魚梁瀬を中心とする高知県東部

 

(伊尾木川上流)

 

高知東部の特徴は、山がV字の谷から成る急傾斜になっていることである.

そのため、インクライン(仮設のケーブルカー)が至る所につくられ、搬出していた.

急傾斜地での苦労は、他の3か所を格段に上回る.

高知県東部は、日本最大の植林の記念碑である.

 

関連記事リンク:いまの森林、なぜこの姿に?

                                  伊尾木川を46km遡る

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(おわり)

 

2017年2月15日 | カテゴリー : 高知学 | 投稿者 : 河田 耕一