53 高知の東端:野根、甲浦とこけら寿司

高知県で、もっとも東に位置するのは、東洋町である.

室戸岬のまだ先で、ほとんど徳島県と言ってもよい.

高知市から南へ室戸に1時間半、岬を回って向きを変え、北にさらに1時間で達する.

しかし、走っている高速バスでは、高知市より大阪に近い.

「東洋町」とは大きく出た名だが、野根と甲浦が合併してできた.

どちらに役場を置くかで揉め、当初2年ごとに、両集落を代わる代わる移動していた.

新庁舎を中間に建設し、決着した.

 

2017年3月31日 修正版

 

 

1.室戸から北へ

 

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(岬を回って)

 

室戸から野根へ、25kmの国道は、すべて海岸の断崖を削ってつくられている.

昔はこの道はなかったから、遍路は波打際の岩を越え、石を伝って歩いた.

波が高いとさらわれる危険がある.

今でも海が荒れると、波は国道まで越えて来る.

ガードレールはすっかり錆びている.

断崖がつきたところが野根である.

 

⒉ 野根

 

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(野根の旧道)

 

野根は、参勤交代に利用された「野根山街道」の古い宿場町である.

町の両端は鍵の手に曲がる「桝形」になっていて、その面影を残している.

古い旅館もそのままである.

野根から室戸へ向かう遍路は、海が穏やかでないと、波打際を歩けない.

そのため、荒れたときは、7日も10日も「潮待ち」をしなくてはならなかった.

懐の乏しい遍路を、無料で泊める「善根宿」が多かったと伝えられる.

その間、遍路も農作業や薪割りを手伝ったことであろう.

家の前に、小さなベンチがあって、お年寄りが集まっている.

もとは雨戸を下ろして座る「ばったり」であった.

道に沢山の花の鉢があって、おばあさんが横に座っている.

花の出張販売だった.

おじいさんは、鉢を運んだ軽トラの棚に板を敷き、昼寝中である.

 

3.野根の朝市

 

野根には「道の駅」的な設備がない.

そこで、地元のご婦人方が、土曜の午前に「朝市」を開いている.

予約していた「こけら寿司」と野菜を買った.

 

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(野根の朝市)

 

カメラを持っていたので、「写すのかと思った」と言われた.

「写します、写します」とカメラを向けた.

「撮らないで!」と言われたが、広告にもなるし、ま、いいか.

 

4.こけら寿司

 

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(こけら寿司)

 

この地特有の押し寿司である.

柚子酢の寿司飯に、焼きサバをほぐして入れる.

まず木枠に1段目を詰め、椎茸、人参、薄焼き卵の具材を並べ、人参の葉を散らす.

上に細長い薄い板(こけら)を敷く.

このようにして順次5、6段詰め、重しを乗せ、1時間ほど置く.

大きい枠では、1段に1升詰まる.

生ものを使わない、素朴なベジタブル食である.

重石が中途半端ではないので、「投げても壊れない」と言われるほど堅く、相当に食べでがある.

 

5.生見のサーフィン

 

北に行くと、生見(いくみ)である.

サーフィンで有名である.

高知では他に、仁淀川河口、大月から四万十川河口にかけて、サーフィンビーチが多い.

しかし遠いから、地元民が中心である.

生見は大阪に近いので、賑わっている.

 

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(生見のサーファー)

 

残念ながら、今日は波が穏やか過ぎる.

町では、ネットに浜の波をリアルタイムで流している.

 

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(生見の店)

 

サーファーのための民宿や食堂が何軒かある.

海を見渡すウッドデッキなど並び、湘南海岸もかくや、の風景である.

大渋滞はないが.

 

6.甲浦

 

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(白浜)

 

さらに北に行くと甲浦である.

入江にある遠浅の浜は、海水浴場になっている.

今はシーズンオフだが、真夏でもそう変わりはない.

高知は甲浦から足摺まで、すべて海に面している.

どこかで何かのマリンスポーツができる.

 

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(甲浦港)

 

高知市内から甲浦まで車で2時間半、高知の辺境のように思われる.

しかし、実は高知県でもっとも大阪に近い.

甲浦から大阪へ、一日に5-6便ある徳島経由の高速バスで4時間半、高知からは5時間である.

昔、橋のない頃、甲浦には大阪からの船が発着し、高知の東の窓口であった.

フェリーの岸壁、昔賑わったであろう、食堂や商店の建物が残っている.

今はダイビングや釣りの渡船の店である.

 

7.野根山街道

 

地図を見ると、高知市から甲浦まで、室戸岬を回って、三角形の二辺を通っていることになる.

ショートカットして、底辺を通れないのか.

それをやっているのが、江戸時代の野根山街道である.

 

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(野根から旧街道方面を見る)

 

奈半利から山に登り、尾根筋を通って、野根に降りる.

今も登山道だが、全行程は35kmあり、ハードである.

古道だけに、笑い栂、宿屋杉、お産杉、装束峠、花折峠など、伝説の場所が多い.

 

 

尾根筋の下を林道が通じているので、そこから探訪することも可能である.

また川に下り、ショートカットする国道もある.

大体は広いのだが、なにせ山の道で曲がりくねっているので、時間短縮にはならない.

四郎ヶ野峠を下ると、小川川が音を立てて流れている.

 

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(小川川)

 

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(おわり)

 

2016年9月22日 | カテゴリー : 高知学 | 投稿者 : 河田 耕一

52 高知の変な施設 2、こんなところに? 映画館、温泉、美術館、公園

高知のこんなところに…こんなものが….

とんでもないところに、とんでもないものがある.

考えられないところに、映画館、温泉、美術館、公園.

みな手造りである.

つくりたくなれば、自分でつくる…高知である.

いごっそう、はちきんの産物である.

 

(2017年8月18日 修正版)

 

1.映画館

 

室戸に向かう国道を1時間、左折して鮎で名高い安田川を遡る.

渓流に沿って2kmほど行くと、橋を渡るよう小さな看板がある.

映画館、大心劇場の入口である.

 

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(大心劇場.豪雨で増水中)

 

どうしてここにあるのか、わからない.

館主は、高知各市町村のご当地ソングをつくって活動するミュージシァンである.

もぎり、内装など、館主の手づくりである.

 

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(客席)

 

毎日の上演はないが、思い出したように、というほどでもない.

固定客もいる.

フィルム映写機があり、大体は「ひばりの…」など昔の映画である.

プロジェクターがあるので、デジタル新作も扱う.

特攻を扱った作品が上映された.

内容は地味だが、高知出身の三山歌手が出演するシーンがある.

一日2回、1週間の興行が満席で、当館開設以来の入りだったらしい.

 

⒉ 手造り温泉

 

高知には、道後のように自然に湧く温泉はない.

しかし、深くボーリングして湧出する温泉、冷泉を沸かした温泉はあちこちにある.

山里温泉旅館もその一つである.

 

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(山里温泉)

 

須崎から国道を行き、山にそれる.

人家が途絶え、狭い山道で、この先で営業しているのか不安になる.

やがて古い看板が現れ、橋を渡って、木立の中に旅館が見える.

ラプラドルが盛大に吠えて迎える.

最近、中国の団体やフランス人が来たそうだが、「秘境の旅」だったのだろうか.

浴場は谷にある.

 

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(浴場)

 

日曜大工で、河原の石をセメントで固めた、凸凹の浴槽、洗い場である.

建物は失礼ながら掘立小屋で、随所から空が覗く.

主人が何としても、ここで風呂に入りたかったのであろう.

泉源からパイプで引き、薪で沸かしてタンクに貯める.

林間に薪の燃える匂いがしている.

高知には、交代で入る林の中の桧風呂、穴蔵の奥にある岩風呂、など自己主張の温泉があった.

廃業や改築でなくなったので、今はここが「とんでも温泉ランキング第一位」である.

 

3.美術館

 

白木谷は、梅林、そして切り口が四角の四方竹の産地として有名である.

高知市の東北になる山の中である.

小学校は残り、全校生徒24人でがんばっている.

そこに「白木谷国際現代美術館」がある.

 

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(美術館)

 

つくったのは、M.T氏である.

この地で工務店をやりながら、前衛絵画を描いていた.

しかし、絵では物足りなくなり、海岸で200トンの玉石を譲り受け、ここにインスタレーションをつくった.

ところが、そのままでは草に埋もれてしまう.

それなら、いっそ美術館をつくる、と思い立った.

 

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(美術館内部.壁の人物が作者)

 

川沿いの倉庫を拡張し、家族、知人で建設を行った.

今も年々、新築、改築が続いている.

美術館そのものが作品である.

壁、柱こそむき出しだが、元工務店主だけに、構造は本格的である.

基礎のコンクリートも普通の倍は入っているという.

 

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(展示室の一部)

 

自作以外に、美術展の出展作、しかし始末に困る?大作の展示場ともなっている.

ピアノがあり、ジャズセッション、演奏会も開かれる.

 

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(工事中? いや制作中)

 

美術館には屋外展示場があるが、いま、その川向うで制作が進んでいる.

作者が鉄筋を溶接中で、順次道路から、生コンをコンクリートポンプ車で圧送する.

鉄筋は太く、県道の橋脚工事と言っても、だれも疑わないであろう.

野外ステージとしても使えるようにするらしい.

今は仮橋だが、いずれ本格的架橋?の制作が進むと思われる.

 

 

4.トンボ公園

 

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(公園の保護区)

 

高知県の西、中村にあるトンボ公園は、公式ガイドブックにも載っている施設である.

場所は、中村市街地の四万十川対岸で、とんでもないところではない.

施設はトンボの標本を始めとした資料館、川魚を中心とした水族館からできている.

そして、谷に沿って1km近く奥に延びる「トンボ保護区」がある.

四万十川と自然は結びつくものの、どうしてここに「トンボ」なのだろうか.

 

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(トンボ保護区)

 

施設は市がつくったものでも、県がつくったものでもない.

創設者のS氏の想いである.

S氏は地元のトンボ少年であった.

高校3年のとき、かねて観察を続けてきた、ある種の生息地が工事で埋め立てられてしまった.

そこで、保護地をつくる、と決意したのである.

今は社団法人で、WWF、市、県の援助もあるが、基本はトンボを愛する人たちの支援である.

最近、自宅付近で、以前は見なかった、オニヤンマなどが飛ぶようになった.

耕作放棄地が増え、農薬の使用が減ったためらしい.

しかし、積極的に保護し、育てようとすれば、場所を自然にまかせて放置する、というものではない.

茂る草を刈り、湿地を維持する、地道で苦労の多い作業が必要である.

その甲斐があって、いま70種類以上が生育している.

見たことがない、クリーム色の細いトンボが飛んできた.

 

 

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(おわり)

2016年9月8日 | カテゴリー : 高知学 | 投稿者 : 河田 耕一