高知には、こんなところに…なぜこんな店が…、と思うところがある.
出店への理屈はない.
経営学者が唱える、マーケティングや地域政策を越えた存在である.
これには二つの理由がある.
第一に、ぜひそこに住みたい.
第二に、ぜひこの仕事をしたい.
この二つが両立されるとき、とんでもないところに、とんでもない店ができる結果になる.
これは他では見られない、高知に特有の「現象」ではないか.
普通は商売、実利が先で、「理屈抜き」は考えられないが.
2016年8月 初版
2018年2月5日 修正版
1.山北
山北はごめん・なはり線、野市駅から車で約10分のところにある.
高知で「みかん」と言えば、ここの「山北みかん」である.
緩い南斜面に、「みかんの花咲く丘」が連なる.
季節には、大規模なみかんの「良心市」が設けられ、無人のスタンドで百円玉を投入し、みんな大袋単位で買う.
⒉ イングリッシュガーデン
(イングリッシュガーデン)
高知で「イングリッシュガーデンに行った」といえば、「英国旅行で公園巡りをした」ということではない.
山北の「イングリッシュガーデン」である.
もともとは文旦農家だが、一室はカフェで、モーニングやランチがある.
薔薇のシーズンは大変賑わう.
薔薇を沢山育てたいね、の思いが始まりらしい.
訪問者が来るようになり、イングリッシュガーデンみたいだね、ということで、今の姿になっている.
下には、ご家族のチェロ製作工房がある.
3.蕎麦
(蕎麦屋、わび助)
蕎麦屋がある.
山葵を自分でおろして、手打ち蕎麦をいただく.
ご主人は陶芸をやるのか、立派な煙突があり、蕎麦は作品と共に出てくる.
丘には、他にも和風カフェや喫茶店がある.
秋には、斜面一帯につくられた、個人の懸崖菊園が公開される.
これらの住まいは、見晴らしの良いみかん畑の中に、ばらばらにある.
家を建てたとして、せっかく良いところにあるのだから、だれか来て欲しいという気になる.
「何かしたくなる」土地なのである.
4.美良布
美良布(びらふ)は、土佐山田駅からJRバスで20分のところである.
なぜJR(以前は国鉄バス)かというと、鉄道を敷く計画があり、実現しなかったので、代行として走らせている.
物部川のダム湖に沿うが、山間の殺伐とした湖と違って、昔から住まれた河岸段丘が湖岸になり、自然の湖の雰囲気である.
北岸は国道が通り、交通量が多いが、南岸は静かである.
湖岸の魅力的な土地だが、それだけにカフェの激戦区で、営業を止めたところを含むと5軒ある.
(元カフェ、ぷー・タロ.今はハーブ入生姜シロップを生産)
(レストラン、オーチョ)
自家製の卵を使ったレストランがある.
切って食べる大型プリンも、なかなかである.
昼下がり、近くの老婦人たちがコーヒーを飲みに来るのは、高知伝統の「喫茶店」でもある.
5.谷相
美良布から山に上がると谷相(たにあい)である.
コミュニティバスはあるが、通学用で便利は悪い.
上がってしまえば、トレッキング気分で歩くことができる.
(谷相)
いろいろの人が外から来て住んでいる.
染色、織物、陶芸、紙漉きの工房があり、営業していないが、ハーブ園もある.
次の理由があるだろう.
・南斜面で、遠く西に開け、見晴らしがよい
・棚田があり、「日本の原風景」だが、高知空港に40分と近い
・複雑な地形で、思い思いのところに住居が建てられる
・周辺にアンパンマンミュージアム、高知工科大学があり、文化的雰囲気がある
谷相は「何かしたい人が集まる」場所である.
6.山の本屋
(本屋の入口)
もっとも高く、行き止まりのところに、書店、うずまき舎がある.
暮らし、自然を中心にした古書店だが、コミックもある.
しかし一癖ある選書で、女店主の個性が伺われるというものである.
(本屋の中)
山上でゆっくり本を選ぶ、外にはない楽しみである.
7.ベーカリー
梼原は、高知市から一日6本のバスで3,4時間かかる、山間の町である.
そこからさらに谷川の狭い道を行くこと3,40分、ベーカリー、シェ・ムアが忽然と現れる.
「国道」に面しているのだが、名高い「酷道」439号(よさく)である.
町々を往来したり、観光客が通るような道ではない.
(国道439号)
(山のパン屋)
田舎のパン屋というと、食パンにあんパン、カレーパンとなるが、そうではない.
バゲットを始めとした、「正統フランスパン」である.
大体、店名、看板はフランス語である.
スイーツ、ランチも洒落ている.
(パン店の中)
ご主人はこの地の出身だそうで、娘さん共々フランスに長期滞在した結果である.
東京近郊の住宅地などにあっても、おかしくない雰囲気といえよう.
といって、お高く留まっている、ということではない.
店は随分前からあるし、作業服の男性、軽のお母さんなど出入りしている.
関連記事リンク:
(おわり)