21  高知でもっとも奥深い伊尾木川峡谷.46km先には誰が住む?

高知の東部は特殊な地形である.

標高1,000から1,400mの山々を何本もの川が削り、海に向かって直線的に、互いに平行して流れている.

高い山が海に近く、かつ雨量が非常に多いため、流れ落ちる急流がこの地形をつくった.

黒部峡谷は断崖と激流で有名だが、これは黒部峡谷が何本か平行しているイメージである.

しかもそこには人々が住んでいる.

谷筋に沿って行き来はできる.

しかし、険しい山を横断して隣の谷に行くことは難しい.

その一つ、安芸市の伊尾木川を訊ねてみよう.

 

2017年9月21日 改訂版

 

 

 1.     伊尾木川

伊尾木川は、もっとも奥深くから流れていて、またもっとも山奥まで人が住んでいる.

河口の安芸市から、最奥の集落まで46kmある.

市のバスで2時間かかる.

その先が徳島との県境、駒瀬越の峠である.

 

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(入河内付近)

 

川の下流、上流、シーズンには、どこにでも鮎釣りの人を見かける.

 

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(森林鉄道の鉄橋、入河内)

 

昔は伊尾木川に沿って森林鉄道で木材を搬出していた.

今も鉄橋やトンネル跡などが多数残っている.

トロッコに便乗できたが、終点から海岸までは7時間ほどかかった.

買物は3日がかりで、1日目に行って旅館で泊まり、2日目に買物、3日目に帰ったという.

もっとも町での買物は年1回くらいで、普段は、昔あった地区のよろず屋で間に合ったのではないか.

途中に発電用の小さなダムがある.

ダム湖はほとんど岩石で埋まっていて、上高地の大正池のような景観になっている.

伊尾木川のどこでも、絶え間なく山崩れが発生しているので、当然である.

 

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(ダムの上流)

 

川幅は次第に狭くなり、岩の間を澄んだ水が激しく流れている.

 

2.  古井

 

中ほどが古井である.

92歳の老婦人と、73歳の息子さんに出会った.

おばあさんは色白で、腰も曲がらず、かくしゃくとしている.

息子さんはこれから川に鮎がけに行くという.

ダムの奥でも放流されているので可能である.

道に「場所取りはしないように」と漁協の看板があったが、鮎と同じく釣師にも縄張りがあるらしい.

 

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(古井にて)

 

廃校になった大きな小中学校がある.

1980年に建てられた鉄筋の校舎で、教員宿舎とともに、遠くから来る生徒の寄宿舎も付随している.

2001年に廃校になっているので、わずか20年で情勢が変化したことになる、

生徒5人の俳句が板に刻まれている.

最後の卒業生なのだろう.

「天の川 夜空の恋路 二人きり」などと、ませた句もある.

郵便局があるが、閉鎖されている.

ポスト、自販機、電話と文明の利器が並んでいるが、電話は無音である.

伊尾木川沿いで携帯は圏外だが.

ポストは収集が行われている.

自販機は動いている.

狐や狸が葉っぱを持って買いに来るのかと思うが、砂防工事がいくつも行われているので、需要があるのだろう.

 

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(古井簡易郵便局)

 

わずかな平地に水田がある.

吊橋があって、まさしく「日本の原風景」だが、横に立派な鉄橋があって、今は使われていない.

 

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(島の橋)

 

3.  終点

 

最後の集落が別役土居である.

以前から顔を合わせるおじいさんがいて、椎茸を育てているが猿が むしって困る、などと話していた.

今回はおばあさんがいた.

おじいさんはしばらく前に亡くなったという.

町に息子がいるが、そこに行っても、部屋でじっとしているだけで何もすることがない.

ここがいいそうだ.

久しぶりの晴天でふとんを干し、草を刈り、花を整理している.

鶏の世話もする.

市のバスは週2回あるが、毎日あっても毎日乗らないしね、ということだった.

 

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(別役土居)

 

安芸の町からここまで46km、ということは、中央線なら新宿から立川を過ぎて高尾よりまだ先である.

高尾から新宿の救急車を呼んでも、往復4時間しないと病院に行けない.

「いのちの平地」があって、救急ヘリが着陸できれば心配は少ないが.

 

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4.駒瀬越

 

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(駒瀬越から 下が別役土居)

 

標高650mの別役土居を過ぎれば、1,050mの駒瀬越への登りにかかる.

周囲は1,400m以上の山で、冬は積雪で通れない.

高知・徳島の県境になる峠の頂上にトンネルがある.

徳島側には人家がないが、下れば徳島への国道195号に出る.

途中カモシカに出会ったことがある.

徳島側では絶えず道路工事をやっていて、2回に1回しか抜けられたことがない.

今も「改良工事」で、9か月間通行止めになっている.

長期に交通を止めての「改良」は、何か違う気もするのだが.

 

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(おわり)

 

2015年7月6日 | カテゴリー : 高知学 | 投稿者 : 河田 耕一